消費税は「弱者」にやさしい!

トピックス, ビジネス・経済

11年11月下旬 刊行

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タイトル 消費税は「弱者」にやさしい!
タイトル読み ショウヒゼイハジャクシャニヤサシイ
サブタイトル 「逆進性」という虚高フ正体
著者 桜井 良治
著者読み サクライ リョウジ
出版社 言視舎
発売日 2011年 11月 28日
本体価格 1500円
ISBN 978-4-905369-14-1
判型 四六判並製
リード文 消費税は『逆進性』があるから、低所得者層に負担が大きいというのは間違いです。生活する立場から経済を見直した本書で増税論議!
解説・目次 「消費税は『逆進性』があるから、低所得者層に負担が大きい」(⇒だから反対)と考えていませんか。それは間違いです。これは「額」と「率」を混同させたり、1パーセント以下の差異を針小棒大に拡大したり、データ抜きの議論によって発生した虚高?るいは神話です。この虚高?Aだれでも入手できるデータを駆使して論破します。著者は「御用学者」でも、硬直したイデオロギーに金縛りになってもいません。財政学の専門でありつつ、家族を介護しながら、生活する立場から経済を見直した結果が本書です。本書を抜きにして増税論議は進みません!
著者プロフィール 1951年新潟県生まれ。同志社大学、大阪市立大学卒。東京大学大学院博士課程所定演習単位取得、現在静岡大学人文学部教授。著書『政府債務の世紀』(新評論)『コスト大国日本の財源』(勁草書房)ほか。


担当編集部より

弊社刊、桜井良治著『消費税は「弱者」にやさしい!』は、一般的に考えられている消費税の「逆進性」(消費税は低所得層により多くの負担を強いる)について、その虚構のカラクリを暴いていきます。
帯文にもありますように、もちろん著者は政治的に中立です。

それを論証するデータは、国民の世帯を所得別に5つにわけた総務省の統計を用いています(2章43p)。また、本文「はしがき」16pでも触れていますが、「弱者」は主に「低所得者」の意味で使います。「低所得者」の区分はこの総務省の統計分類に従います。

以下、ごく簡単に本書議論をまとめます。

★消費税は不公平ではない理由

①「逆進性」により不公平だという議論は、消費税の負担「額」と負担「率」を混同している。間違いなく高所得層のほうが消費税をより多く負担している。⇒2章43p円グラフ

※目の前に1000円+税50円の本があったとして、この税50円は、月収20万の人と月収50万の人を比べると、月収20万の人のほうが負担率は大きい。このように「逆進性」を説明する人がいる。しかし、この人の買い物は月に本1冊であるわけでない。だから、この例には意味がない。統計的にみれば、月収の高い人のほうが低い人に比べて、より多く消費するため消費税の負担額も多い。

また、月1万円消費税を負担すると仮定する。するとこの額は、月収20万の人と月収50万の人を比べると、月収20万の人のほうが負担率は大きい。このように「逆進性」を説明する人がいるかもしれない。しかし、これもまた実際の統計を無視している。収入が違っても、たまたま同じ額の消費税を負担することはあるだろう。しかし、統計を調べると、収入が多い人がより多く消費しているのは事実である。

「エンゲル係数」にも誤認がある。現在、その数値は所得各層ともほぼ20数%であり、ほとんど格差は見られない。⇒4章82p

②たしかに、低所得層のほうが負担率が高い、という「逆進性」を示すデータはある。しかし、その差は0.01%に満たないもので、どの層でもほぼ同じの負担率、ということができる。⇒3章

③それでは「垂直的公平性」にもとる、という見解があるかもしれない。しかし、②のデータは、事業者がすべて消費税を販売価格に転嫁できることを前提にしているが、実際は転嫁率100%ということはありえない。「逆進性」は転嫁率100%の場合にのみ成立する。消費税は消費者がすべて負担するのではなく、実質は企業と政府が負担している部分も多い。⇒6章

中小零細業者は転嫁できないで不利という考えがあるが、これは消費税だけの問題ではなく、価格決定における力関係の問題といえる。つまり消費税とは別問題。

④ミクロ経済学の「機会費用」の考えで消費行動を考えると、低所得層は低価格での買い物をするため、消費生活で有利。低所得層が消費額が少ないのはこの理由による。⇒5章

★その他本書の考え
※消費税額還付は、方便としてはいいが、本質的ではない。⇒7章
※複数税率は効果がない。処理が複雑になるので、「還付」のほうがよい。⇒7章
※消費税を上げ、社会保障を充実すべきである、という見解。政府の財政危機は問題。一刻も早い解決を。
※「逆進性」に特化した議論のため、税の直間比率についてはほとんど触れていない。